はじめに
子育てに携わる全ての家庭にとって、子どもの教育費は最大の関心事の一つです。近年、教育費は物価上昇に伴い高騰しており、十分な準備をしておかないと大きな負担となります。本記事では、子どもの教育資金についてさまざまな角度から詳しく解説していきます。教育費の見積もり方、貯蓄方法、公的支援制度の活用など、教育資金の確保に役立つ情報を網羅しています。
教育費の実情
まず、教育費の実情を把握しましょう。子どもの教育にどの程度の費用がかかるのか、公立と私立の違いは何か、幼児教育から大学進学まで段階的に見ていきます。
公立と私立の教育費の違い
子どもの教育費は公立校と私立校で大きな開きがあります。文部科学省の調査によると、幼稚園から高校卒業までの教育費は、公立の場合約574万円、私立の場合約1,840万円と、私立の方が3倍以上の費用がかかります。また、大学進学時にも公私立で費用が異なり、国立大学で約250万円、私立文系約400万円、私立理系約540万円、私立医歯系約2,400万円と高額になります。
このように、教育費は学校の種類によって大きく変わるため、早期から子どもの進路を想定して準備を進める必要があります。
幼児教育の費用
幼児教育の無償化制度により、3歳から5歳の保育料が大幅に軽減されました。しかし、認可外保育園では0歳児の月額費用が約4万5千円と高額です。また、無償化の対象外となる教材費や行事費などの実費もかかります。
このため、幼児期から教育資金の計画を立て、貯蓄を始めることが重要です。
高等教育への進学費用
大学進学時には、入学金、授業料、寮費、一人暮らしの生活費など、高額の費用が必要となります。私立大学への進学では、特に文系で平均735万円、理系で867万円もの費用がかかると言われています。この費用を賄うには、早期から計画的な資金準備が不可欠です。
教育資金の貯め方
教育費の高騰を踏まえ、いくつかの教育資金の貯め方を解説します。それぞれのメリット・デメリットを把握し、状況に合わせて組み合わせることが重要です。
銀行預金
銀行預金は、確実性と自由度が高い反面、低金利時代では利息が期待できません。しかし、流動性が高く、必要に応じていつでも引き出せるメリットがあります。教育資金の一部を預金で準備しておくことで、臨機応変な対応が可能になります。
定期預金などを活用すれば、少しずつ確実に資金を貯め込めます。また、積立式の定期預金なら金利も高くなる傾向にあります。
学資保険
学資保険は教育資金の準備に広く利用されている方法です。契約時に教育費の目標額を設定し、月々一定額を払い込むことで、計画通りに教育資金を賄えるのが最大のメリットです。一方、途中解約すると払い込み保険料の一部しか受け取れないデメリットもあります。
子供が小さい間から加入することで、より低コストで教育資金を確保できます。家庭の事情に合わせて、公的機関の学資保険や生命保険会社の商品を検討しましょう。
積立投資・NISA
投資信託や株式投資、NISAの活用も教育資金準備の選択肢の一つです。長期的な視点で運用すれば、高い収益が期待できます。ただし、値下がりのリスクもあるため、運用商品の特性を十分理解し、リスクの低い商品を選ぶ必要があります。
NISAは、年間最大120万円までの非課税枠があり、教育資金への活用に適しています。NISAでも運用成果次第では値下がりリスクは免れませんが、長期保有すれば平準化できるメリットがあります。
公的支援制度
次に、教育資金の確保に役立つ公的支援制度を解説します。いくつかの制度を組み合わせることで、教育資金の負担を軽減できる可能性があります。
児童手当・児童扶養手当
児童手当は中学校卒業までの児童を養育している家庭に支給される手当です。支給額は15歳以下で1人当たり月額1万5,000円、12歳以下なら月額1万725円となっています。低所得世帯の場合は、所得制限により支給額が増額される特例措置があります。
また、ひとり親世帯には児童扶養手当が支給されます。全額支給の場合、1人目は月額4万2,910円、2人目以降は加算されます。教育資金の一部を賄うために活用できる制度です。
高等学校等就学支援金
高校生の授業料に充てる就学支援金制度があります。全日制課程の生徒に対して、家計基準に応じて支給額が決まり、最高月額9,900円が支給されます。低所得世帯の場合は、入学料や教科書代の支給もあります。
2024年度からは、年収590万円未満世帯に対する支援額が大幅に増額される予定です。高校生の子どもがいる家庭は、この支援を積極的に活用すべきでしょう。
大学等授業料減免制度
低所得世帯の大学生等を対象とした授業料減免制度があります。年収270万円以下の住民税非課税世帯なら、国公立大学の授業料が全額免除されます。さらに、年収590万円未満世帯は授業料が年額28万円に減額され、年収690万円未満世帯は年額54万円に減額されます。
併せて給付型奨学金の支給額も増額され、経済的理由で修学が困難な学生の勉学を支援する体制が整備されました。
親から子への教育資金贈与
教育資金の準備が困難な場合、親や祖父母から子や孫への資金贈与を検討するのも一案です。教育資金贈与には、贈与税の非課税措置や生前贈与の特例があります。
教育資金の贈与と非課税措置
親や祖父母から子や孫への生活費や教育費の贈与は、一定の範囲内で贈与税が非課税になります。通常必要と認められる範囲の贈与は全額非課税、年間110万円までの現金贈与も非課税の対象です。
また、孫への生前贈与は「生前贈与加算」の対象外となり、相続時の課税対象にはなりません。相続時精算課税制度を利用すれば、最大で2,500万円までの贈与に贈与税がかからず、相続時に相続財産に加算されます。
教育資金の一括贈与制度
さらに、30歳未満の子や孫に対して最高1,500万円までの教育資金を非課税で一括贈与できる制度があります。対象となる教育資金の範囲は広く、学習塾の費用も500万円までなら非課税となります。
ただし、受贈者が30歳に達したり贈与者が亡くなったりすると、残額に対して贈与税が課税されます。手続きは金融機関で行い、引き出しには領収書などの提出が必要となります。教育費の準備が難しい場合はこの制度を検討しましょう。
まとめ
教育資金の確保は、子育てする全ての家庭にとって重要な課題です。近年、物価上昇などの影響で子どもの教育費はますます高騰しており、計画的な準備が一層重要になっています。
公立と私立の選択、幼児教育から高等教育までの段階的な費用、親からの資金贈与の検討、さまざまな貯蓄方法の活用、公的支援制度の利用など、教育資金確保に向けてはさまざまな選択肢があります。子育て世帯の状況に合わせて複数の方法を組み合わせ、早期から着実に対策を講じていくことが求められます。
子どもの教育を第一に考え、家計に無理のない範囲で教育資金を賄うことが理想的です。ただし、教育は子どもの将来にとって極めて重要なものです。教育資金の準備は、子どもの可能性を最大限に伸ばすための投資と捉え、家庭の事情に応じて知恵を絞り、様々な選択肢を検討することが大切でしょう。